インタビュートップ > Vol.8 マセラティ ジャパン株式会社 CEO 牧野 一夫

マセラティ ジャパン株式会社 CEO 牧野 一夫

マセラティジャパンは2010年4月にイタリア、マセラティ本社の子会社として設立。翌年、それまで正規輸入元であったコーンズ・アンド・カンパニー・リミテッドから、インポーター権が移管され、マセラティの日本法人として事業活動をスタートする。そして2014年、マセラティは創業100周年を迎え、新型モデルを導入するなど飛躍の年となった。さらなる攻勢をかけるべく日本人としてCEOに抜擢された牧野一夫氏に今後の事業展開について話を伺う。

マセラティ ジャパン株式会社 CEO
牧野 一夫
1963年生まれ。三重県出身。東京大学卒業後、1988年マッキャンエリクソンへ入社。1990年にBMWジャパンへ。プロダクトマネージャー、ディーラーマーケティング マネージャー、ブランドコミュニケーションマネージャー、広告宣伝統括マネージャーなどを歴任。1997年よりポルシェジャパンへと移り、執行役員 営業部長兼マーケティング部長を務める。2015年4月より現職に。
インタビュアー:カーグラフィック代表取締役社長 加藤 哲也

100年以上続いているブランドの価値を伝えていきたい

加藤 牧野さんは長らくポルシェにお勤めでしたが、ドイツとイタリアのブランドの違いをどうお感じになっていますか?

牧野 そうですね、ドイツブランドでかれこれ25年やってきました。どちらがいいとかではなくそれぞれ違いますね、お国柄を象徴しているなと感じる部分はあります。ただ、イタリア人の名誉のために付け加えておきますが、イタリア人は本当によく働きます(笑)。

加藤 わたしも初めてイタリアに行ったときに、エリートと呼ばれる人たちは早朝から働いているし、きちんとしていて、非常に驚いた経験があります。とは言えどもお国柄もそうですが、プロダクトとしても両者はかなり違うと思いますが。

牧野 ドイツのクルマは工業製品として最高に優れていて機能性があり、そのうえに走るよろこびなどがある。一方でイタリアのクルマは、機能性に加えて、日常をこえたところの楽しさがある。艶といいますか、色気のようなものを感じます。

加藤 それにくわえて、わたしもいま長期レポート車でアルファロメオに乗っているのですが、イタリアブランドの工業製品としての信頼性がかなり高まってきているように感じます。

牧野 それはとても重要なところで、楽しければ信頼性を犠牲にしてよいというものではありません。自動車製造はイタリアにとっても国の基幹産業ですし、マセラティもラインナップが増えて、趣味のクルマとしてではなく実用車として使われる方が増えてきた。ですから信頼性はとても重要な要素で、本社もとても意識しています。

加藤 やはり本国のCEOのハラルド・ウェスターさんの体制になって大きく変わった気がしますね。以前にお会いしたときも彼はエンジニアだったこともあって、非常にクオリティコントロールにこだわっていて、それがいま実を結んでいるように思います。しかし、ポルシェからマセラティって一見、対照的にも思えるブランドになぜ移られたのですか?

牧野 ポルシェジャパンに入社した当初は、販売台数もまだ年間1,000台に届いていない状況で、それがいまは5,000台を超えるところまできた。それはスポーツカー以外のSUVやセダンの導入もあって実現できたわけですが、そういう経験も踏まえて新しいチャレンジをしてみようと思ったんです。

加藤 なるほど、製品のポジショニングや販売ボリュームの伸び方など、似ているところがあると。

牧野 あとは自分が買う立場として考えたときにも、BMW、ポルシェときてマセラティって、流れがいいなと(笑)。長くブランドビジネスをやってきて、大切なのはやはりブランドに共感できて、これならやっていけると自分自身が思えること。このブランドが日本に存在する価値を胸をはって伝えられる、そういうものが必要だと思います。

加藤 確かに順調にステップアップされている感がありますね。牧野さんはCEOに就任されてまだ間もないですが、これまでの流れで守っていくべきところ、変えていくところ、それぞれどうお考えでしょうか?

牧野 守るべきはやはりマセラティのブランドです。ブランドは放置しておいて継続するものではありませんから、きちんと継続的に育てていかなければいけない。守りながら、進化させていく、そういうイメージでしょうか。

変えていかなければいけないのは、昨年の年間登録台数は約1,400台と一昨年の3倍になりました。これくらいボリュームが増えてくると、ディーラー経営はもちろん、お客様へのアプローチも、発展的に変えていかなければいけない。

加藤 では、もっともっと台数をのばしていこうとお考えでしょうか?

牧野 いえ、やみくもにボリュームを追うようなことはしません。近江商人の“三方よし”じゃありませんが、お客様とディーラーとインポーターがそれぞれハッピーになれるコミュニティを作りたい。

加藤 牧野さんが日本でマセラティの陣頭指揮を取られるのに適しているなと感じるのは、奇しくも、ポルシェが通ってきた道をマセラティも通ろうとしている。とりわけいま多くの人が待ち焦がれているSUVのレヴァンテも控えていて、ポルシェがカイエンを導入したときと似た状況にあると思うのですが、それを見てこられてどうお感じになっていますか?

牧野 もちろん、知見をフルに活用してやろうという思いはあります。ただし、ブランドも時代も違いますから、成功体験だけにとらわれてはいけないと肝に銘じています。

レヴァンテに関しては、かつてのポルシェのように2ドアがメインのメーカーがSUVを作るとなると心配もありますが、マセラティは4ドアがメインのブランドです。いまやSUVはセダンと比較的近いポジションにある。そういう意味で、いい選択肢が1つ増えると考えています。

加藤 確かにそうなんですよね。SUVっていまやセダンと比較される時代なんだと。
実はつい数カ月前にカーグラフィックの巻頭特集でSUVの企画をやったんです。ポルシェのマカンが主役だったんですが、この号の売れ行きがすごかった(笑)。もちろん売れるのは嬉しいことなんですが、あれ、うちの読者も変わってきているのかなと(笑)。
ハードコアでオーソドックスなクルマ好きは、どこかSUVのようなものにアレルギーがあるんじゃないかと思い込んでいた部分もあるんですけど、さにあらずと。

牧野 レヴァンテでもぜひ特集を組んでください(笑)。クアトロポルテのアーキテクチャーで作られるイタリアメーカー初のSUVになります。

加藤 実はマセラティって、100年もの歴史があるブランドで、そのヘリテイジをもっともっとアピールされたほうがいい気がしますけれども。

牧野 マスプロダクションではありませんので、広くあまねくとは考えていませんが、あるターゲットグループのなかで、もちろんより認知していただくこと、魅力を知っていただくことは課題の1つとしてありますね。

加藤 実は、小林彰太郎さんはマセラティが大好きでした。カーグラフィックに入ったころ、小林さんの影響で勉強するわけです。戦前からあるスポーツカーメーカーで、その歴史はフェラーリよりも古く、モータースポーツシーンにおいて重要な役割を担ってきたことを改めて知る。スーツでいえばクラシコ・イタリアのようなブランドですよね。

牧野 たしかにブランドとして100年以上残っていることって凄いことだと思います。親会社が幾度か変わっているなかで、価値がなければ残らない。その素晴らしさを伝えていかなければいけないと感じています。

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